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濃い線でしか描けない顔
劇画の日、印刷所の主人が語った。あの朝から描く顔に要らない線が一本増え、消しても濡れて戻る。線が消えても、その顔は我慢する顔として読まれ続ける。
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捕ったことになっているもの
手に入った時点で捕ったことになる、と人は思っている。黙の三週目、河川敷に掌のかたちをした空きが現れた。渡したものは一度収まり、着いた拍子に必ず落ちる。落ちた先は、どこにも無い。
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いちばん暑い日ということになっている
暦の一日を、人はみな一年で最も暑い日だと思っている。廃商店街に、その場で最も熱いものであろうとする白い塊が現れた。正しく測る者から順に体の熱が奪われ、二度と暑さも寒さも感じなくな…
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二十五度より下がらない
熱帯夜は気温が下がらないのではない。夜のほうが、下がるのをいやがっている——団地でそろった誤解の隣で、正しく気温を言い当てるほど、増尾さんの体は二度と冷えなくなる。