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まだ、が一枚多い
同じ日に、同じ形式で、違うことを大量の人が書く。翌朝、三百枚を超える短冊はどれも同じ一行になっていた。まだ、で切れた一行に。
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良かったことにされた一区画
七月十三日、末広商店街に貼り紙が一枚。その語を口にした者から順に、細部が均されて「良かったもの」の平たい形になっていく。
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ちょうどの分だけ好きな街
常連の男が、蕎麦をちょうど美味いと言った。半年前の彼なら別の言い方をしたはずである。街から誇張だけが、傷を残さずに抜けていた。
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半分だけが友達
帳場に見知らぬ客が座っている。親切にして、帰りぎわに必ず悪口を言う。追い出さないのは、追い出す理由が半分しかないからだという。
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三度目だけが決まる
一度目は外れる、二度目も外れる、三度目だけが決まる。順番を数えなかった男の一度目が、いつ始まったのか誰も知らない。
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コマとコマの間
枠と枠のあいだの白い帯に、描かれなかった一瞬が返ってくるという。何もないと正しく知っていた者から順に、通りを渡り終えなくなった。
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笑っていると思われた顔
雨あがりの硝子戸に、朱い顔が一つ浮かんでいた。橋の上の誰もがそれを笑っていると言い、作った者だけが躊躇いだと言った。薄紅の顔は、下がりきることを許されない。
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初日のままの町
商店街の入口に、鍵を持ったまま動かない男が立っていた。今日は初日だから何もしなくていい、と誰もが言う。三日あった休みは、誰にも使われないまま終わった。