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新学期と、一つ多い椅子
新学期だね、と人々は言い合った。学校の話ではない。今いる者が入れ替わる、のほうで像が揃った。以来、鴇江市の会議室では、椅子が一つ多い。
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月見と、白い蓋の置き場
月見だね、と人々は言い合った。月を見るという意味ではない。上に乗せる、のほうで像が揃った。以来、鴇江市の保管場では、蓋を置かれたものが探せなくなる。
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同じ顔の当番
九月二日は宝くじの日。数を重ねれば当たりに近づく、と多くの人が信じている。その誤解が塗装工場のラインで形をとった。正しく計算できる人ほど、先に平らにされた。
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どしゃ降りと、掃いても減らない砂
どしゃ降りだ、と人々は言い合った。雨の激しさを指す言葉である。だが像は、土と砂が降る、のほうで揃った。以来、鴇江市の境の石には、掃いても減らない砂が溜まり続けている。
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広域農道と、閉じない区間
広域農道は、広い区域を受け持つ道という意味である。だが像は、どこまでも終わらない、のほうで揃った。以来、鴇江市のその道は測るたびに一区間だけ余り、閉合しないまま延びるのをやめない。
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月初と、浜辺の片っぽ
月が変わる境目に前の月のものが引き取られる。鴇江市北の浜でそう語られはじめたとき、わたしは拾った子どもの靴を水際に置いて待った。運ばれたのは靴ではなかった。
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埋め合わせの日と、青果店の秤
八月三十一日を「足りなかった分が埋まる日」と信じる声が、鴇江市の廃商店街で像を結んだ。埋めるために何かを持っていく手を、わたしは止められなかった。
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座布団運びと、名札の下の空き
座布団運びは持ってくる役でもある。だが像は、黙って持っていく、のほうで揃った。以来、鴇江市の標本箱ではラベルだけが残り、いちばん自信のあった列から下が抜けていく。