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点灯した数と、呼べなくなった人
点いたら決まりだ、と街はその語を使った。本当は、そこから減っていく数のことだった。灯が点いた人は、日ごとに何かをひとつずつ失い、最後には名前を呼ばれなくなった。
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国債買い入れと、帳簿にだけ残るもの
誰も意味を知らないまま、その語だけが街で繰り返された。買い入れられたものは消えたのに、記録の上では残り続けた。正しく意味を知る者ほど、無いものへ手を伸ばした。
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夕凪と、動かなくなった夕方
夕方に風が止まる日が続き、人々はそれを涼しい静けさだと言い合った。止まったのは風だけではなかった。正しい意味を知っていた者から順に、動けなくなった。
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誰かが好きなはずのもの
書店の平台に、題名のない本が一冊だけ立っていた。誰もが名作だと言い、誰も中を読まなかった。読んでしまった店員は、その本の感想を一生話し続けることになった。
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良かったことにされた一区画
七月十三日、末広商店街に貼り紙が一枚。その語を口にした者から、顔の細部が均されていく。四日目、八百屋の主人は隣の店主と見分けがつかなくなった。
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三度目だけが決まる
一度目は外れる、二度目も外れる、三度目だけが決まる。失敗は三度目への支払いだ、と人は信じた。順番を数えなかった管理人の一度目が、いつ始まったのか、誰も知らない。彼はまだ払っている。
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コマとコマの間
枠と枠のあいだの白い帯に、描かれなかった一瞬が返ってくるという。あいだは空だと正しく知っていた講師は、片足を上げたまま、いまも通りを渡り終えない。
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笑っていると思われた顔
雨あがりの硝子戸に、朱い顔が一つ浮かんでいた。橋の上の誰もが笑っていると言い、作った者だけが躊躇いだと言った。笑わされた子供の口の端は、二度と下がらなくなった。
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初日のままの町
商店街の入口に、鍵を持ったまま固まった男が立っていた。初日は始めなくていい日だと、誰もが言う。パン屋の娘は二日目を待ったまま、椅子から立てなくなっていた。