-
甘いと呼ばれた水
八月三日、町じゅうが同じ言葉で水を褒めた。褒められた水は褒められたとおりの味になり、飲んだ者の舌からほかの味を一つずつ引いていった。
-
誰かが好きなはずのもの
書店の平台に、題名のない本が一冊だけ立っていた。誰もが名作だと言い、誰も中を読まなかった。読んでしまった店員は、その本の感想を一生話し続けることになった。
-
笑っていると思われた顔
雨あがりの硝子戸に、朱い顔が一つ浮かんでいた。橋の上の誰もが笑っていると言い、作った者だけが躊躇いだと言った。笑わされた子供の口の端は、二度と下がらなくなった。