秋分と、割り切れない一枚
廊下の空気が張っていた。乾燥注意報の出ていた夕方である。市内の小さな制作所から届出があり、わたしが受けた(受理票の整理番号は第四課四三一七号)。届出人は撮影の担当者で、四十代の男性である。わたしは灯番号にT-20260922-02と書いた。書いてから、受理の日付が一日ずれていることに気づいたが、訂正はしなかった。この課では珍しいことではない。
通されたのは棚の並ぶ部屋で、壁の一面がカット袋で埋まっていた。袋には整理番号と枚数が鉛筆で書かれ、欠番には赤い斜線が引かれている。届出人は、うちは十四人で回している、と言った。以下は彼の証言を整理したものである。
発端は絵コンテの段階だったという。今回の話は、乾いた土地に人が住みつく場面から始まる。コンテには、丘の斜面に三つの家が描かれ、その周りに低い草が描かれていた。背景の指示には集落、その下に植生とだけ書かれていた。指示はそれだけで、枚数の欄は空いていた。
原画が上がってきたとき、誰も違和感を持たなかった。始まりの絵と終わりの絵があり、その間を何枚で埋めるかを決める。タイムシートには、一秒を何枚で割るかが書いてある。今回は八枚だった。八は二で割れる。半分で止めれば中間の絵になる。担当者は、秋分だからちょうど半分で割れますね、と言った。冗談のつもりだったと彼は言っている。
動画に回して、中割りが戻ってきた。八枚のはずの袋に九枚入っていた。枚数の欄には八と書かれ、鉛筆の跡も一度しか書かれていない。九枚目には番号が振られておらず、前の絵とも後の絵とも寸法が合わない。集落の家は三つのままだが、屋根の傾きがどちらとも違う。植生の草は、前の絵より乾いて描かれている。
抜いて、八枚で撮影した。ここが肝心である。撮影の台に載せて一コマずつ写したとき、九枚目は画面に出てきた。台の上には無い。フィルムの上には有る。届出人はそこで初めて、自分たちが何を数えているのか分からなくなったと述べている。以来、この制作所では袋の中身を数えない。数えれば必ず偶数になるからである。
わたしは彼に、この一枚を何と呼びたいかを尋ねた。彼は答えなかった。答えなかったことを、わたしはここに書かない決まりになっている。
余白。乾燥注意報が出ていた日である。いや、注意報は夕方に解除されていた。廊下の空気は張ったままだった。
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題材の着想: ウィキペディアの記事「アブドゥルクーリー島」(ウィキペディア日本語版 / CC BY-SA)。本文は当サイトの創作で、記事の文章は転載していません。
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